クリエイトバリュー中村宏      「弱者の情報戦略」

竹田ランチェスター経営「弱者の戦略」を実践するための「弱者の情報戦略」を考察します

風評に注意!福島の原子力発電所のトラブルの影響

まず、今回の東北関東際震災で亡くなられた方、被災された方々に
深くお悔やみとお見舞いを申し上げます。

津波には驚異的な破壊力があること知り、あらためて自然の脅威を感じている所です。


実は被災のこととは別に、
大学で専門的な技術を学び、放射線防護の国家資格を持つ専門家の1人として
コメントさせていただくことにしました。

今回の地震で緊急停止した福島第一原子力発電所の1号機(1F1)と同
3号機(1F3)が水素爆発を起こしたことを受けて、

放射性廃棄物や毒物を含んだ雨が降るとこわい」いうウワサを
ネットで広めようとする動きが見えますが、
こんなもの全く根拠のないデマです。絶対に振り回されないでください。


大体、マスコミがニュースになる部分(水素爆発や被ばく状況)ばかりを強調し、
政府が対策の見通し発表しないのでこんな風評が立つのだと思います。


水素爆発、それ自体が放射性廃棄物を拡散させる訳ことはありません。


被ばくされた方々の放射線量も少なく、
不用意に体内に入り込む(経口、傷口から侵入)ことに気をつけていれば
健康に害があるレベルではないので冷静でいてくださって結構です。


しかし、そんな表面的なことではなく、実は深刻な心配があります。


緊急停止した炉心を冷却するための循環系統(再循環系と呼ぶ)が機能しないと
報告されていることです!(第一原発、第二原発の10機すべて)


原子力発電所は、天災や破壊行為、機器の故障などが発生しても、
原子炉の暴走(制御できない核分裂反応)を食い止めるためのいろいろな仕組みがあります。

今回は大きな揺れを感知して緊急炉心停止装置(ECCS)が働きました。
しかし、原子力燃料が核反応を起こした際に発生する放射性廃棄物が、
燃料棒の内側にたっぷりとたまっており、

この放射性廃棄物が非常に高い熱を発生するための、
原子炉が停止しても引き続き冷却水を注入して循環させ、
燃料集合体を冷却する必要があるのです。

通常、再循環系と呼ばれるシステムがこのために使われますが、
今回緊急停止した第一、第二原発の全機でこの再循環系が機能していないと報告されています!

炉心に冷却水が少なくなくなると燃料集合体の上部が冷却水面から露出し、
露出した部分はカラたき状態になるために極めて高温となり、
この高温のためにジルコニウムでできた被覆管が損傷し、燃料棒の被覆管内部に閉じ込められていた
高レベルの放射性廃棄物が冷却水中に漏れ出します。

(一応、漏れても圧力容器、格納容器の二重のガードで閉じ込められるが)

これがメルトダウンと呼ばれる事故で、
スリーマイル島での事故でも全く同じことが起こりました。

「海水を注入する」というのは再循環系が機能せず、通常手段で炉心を冷却できなくなった
場合の最後の手段です!
海水を注入すると炉は二度と使えなくなります。(廃炉にするしかない)

従って、1F1と1F3で実施されている措置は、極めて緊急的な措置で、最後の手段いうことになります。

心配なのは、現在停止している他の原子炉でも、再循環系が機能していないと報告されていることです。

全機とも海水注入などとなれば、炉は全滅で、
東京電力が提供する電力の相当部分が失われてしまいます。


また福島の原発の原子炉はBWR(沸騰水型)と呼ばれる軽水炉では、
炉心で発生した蒸気をそのままタービンや復水器を通す仕組みです。

現在は弁で主蒸気系を封鎖しているはずですが、
炉心で被覆管が破れて漏れ出した高レベルの放射性廃棄物が、冷却水から発生した蒸気に交じって
発電系のタービンや復水器に回ってしまうと、

除染するのに大変な手間がかかることになり、
炉を再開するには相当の期間が必要になります。


その間、首都圏に対する電力供給は深刻な事態になります。
私が恐れるのはこのことです。

国はこのトラブルに対する対処の指針や見通しを発表していません。
マスコミも肝心なところには目を向けておらず本当の所を報道していないように思えます。

冷静に、客観的に、強い関心を持って自体を見守りたいと思います。


クリエイトバリュー