クリエイトバリュー中村宏      「弱者の情報戦略」

竹田ランチェスター経営「弱者の戦略」を実践するための「弱者の情報戦略」を考察します

「真の思いやり」は生産性を上げる

1.中途半端な「思いやり」の行動

ある組織を訪問した時に1人の経営者がこんな悩みを聞かせてくれました。

「うちでは職員で同士が思いやることを大切にしています。1年ほどかけて思いやりを実践するよう皆で活動をして来ました。ところが相手を思いやるばかりに仕事の効率が落ちてしまって今問題になっています」

読者の皆さん、どう思われますか?あるいは、皆さんも同じような体験をされてはいないでしょうか?

私は「思いやり」の意味を中途半端にご理解されているな、と感じました。この組織では思いやりを実践する方法が偏りすぎているようです。

おっしゃることは「アサーティブ・コミュニケーション」の副作用です。確かにそういう弊害もあるでしょう。ですが重要なことは「何のためにアサーティブ・コミュニケーション」を導入しているのか、というその目的です。

本当に互いを思いやることで、職場のムードを改善したいのなら、やるべきことは「遠慮ではなく相手の自己実現を支援すること」です。相手がそうしたい目的、何を悩んでいるのか、を知り、それを解決するための支援をすることこそが重要です。対立者ではなく、相手の協力者として振舞うためにどうしたら良いかを考えるべきです。

このような行動がチームとしての生産性を下げるはずはなく、互いの協力の質が上がることによって仕事の生産性は上がって行きます。

「思いやり」を大切にしたいのなら、「何が相手を思いやることなのか」を徹底的に考えて見る必要があると思います。


2.組織のコミュニケーション基礎力をチェックしましょう

組織が協働して創造的な仕事をするためには、互いに信頼でつながっていなければばりません。そしてこの信頼を生み出すためには、「想いやり」の行動が必要です。

この「信頼と想いやり」がある職場環境を作る基本は、1人ひとりの「気付きの力」です。私は、この信頼と想いやり」を生み出すため、5つの基本的な行動規範を提案しています。

(1)「関心」の行動(または関心力)
組織人としての皆と協力して仕事をするための最も基本となる行動です。端的に言えば「人に関心を持てない人が、他の人から愛されることはない」ということです。周囲の同僚の日常の変化、会話や行動に関心を持ち、気付きを通じて人の心の動きをつかんでおくことが、皆からの信頼を得るための基礎となります。

(2)「聴き感じる」行動(または聴く力=きくりょく、と読んでください)
言葉だけに頼った会話をしていると、互いの理解が浅いために「衝突」や「妥協」という望ましくない行動が起こります。言葉だけではなく、声のトーンや表情や目の動きなど、ありとあらゆる感覚を使って相手の気持ちを含めて理解すること、さらに相手の主張の背景にある、その人がやってきたこれまでの仕事や、その人が現在置かれている立場などを理解することで、相手の主張の根拠や人柄までを含めて理解すること、これが「聴く」という行動です。

(3)「伝心」の行動(または伝心力)
文字通り伝えるための行動ですが、ポイントは「自分の言いたいことを言う」ではありません。それは最低の行動です。そうではなく「聞き手の立場に立って方法を工夫する」ことです。一言だけで要点を伝えられるよう、自分の主張を徹底的に深く理解しておくこと、聞き手の理解力や関心に合わせて伝え方を工夫し、常に相手に受け止めてもらえるための話し方、シナリオづくり、場所選び、伝達手段を取ることです。

(4)「働きかけ」の行動(考働力=こうどうりょく、と読んでください)
自分の胸の内を開き、周囲の人に勇気を出して働きかける行動です。目を合わせて挨拶したり、反論や意見をいう時は対立者ではなく協力者としてアドバイスする姿勢を取ったり、人の仕事の隙間を補ったり、進んでやっかいごとを引き受けたりする行動です。自ら相手を信頼しなければなかなかできる行動ではありませんが、それだけにこちらから行動することは相手からの信頼を得る大きなきっかけとなります。

(6)「振り返り」の行動(省進力=せいしんりょく、とよんでください)
「自分省みて、良かった点/反省すべき点を明らかにして前に進む」ための行動です。行動を起こす際には、常に「こうすれば上手く行くかな」という仮説を立てて、後で成果が検証ができるようにして行ないたいものです。「偶然の成功」を「反省と前進(ステップアップ)の材料」に変えるための行動です。


以上、特別なことは何もありませんが、人間、仕事が忙しくなると、この5つの基本行動を疎かにしがちです。結果として信頼関係にヒビを入れてしまうことも珍しくありません。

なぜ皆が自分がしていることに目を向けないのか、言うことに耳を傾けないのか、そんな疑問を感じた時は必ず原因があります。まずこの5つの基本行動を振り返ってチェックしてみることをお勧めします。


3.「組織コミュニケーション基礎力診断」サービス

5つの基礎的なコミュニケーション力を自分でチェックするためのツールを作ってホームページに掲載しています。

「組織コミュニケーション基礎力診断」

5つの基本行動の各々について、日常でどれくらいできているかを自分自身でチェックすることができます。また1つ1つのチェックについては、詳細な「解説」のページを設けました。

「組織コミュニケーション基礎力診断(解説)」


以上のチェックの結果、行動に課題があるな、とか、具体的な行動の仕方を研究したい、と感じられたら、この研修をご参考に活用していただければ幸いです。

「想いやりのコミュニケーション」

外部から見て魅力を感じる組織、価値あるサービスは組織の協働から生まれてくるものです。その基本となるのは「信頼と想いやり」に裏付けられた組織のコミュニケーション活動です。

是非、組織の総合力を向上させるためのツールとしてご活用ください。


クリエイトバリュー 代表 中村 宏